“孤独と喪失”の純粋小説『今夜ウォッカが滴る肉体』(望月 佑=著)、2009年3月28日発売!

“生きる”って切ない……。でも生きなくちゃダメなんだ。『今夜ウォッカが滴る肉体望月 佑=著2009年3月28日(土)発売!

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“孤独と喪失”の純粋小説『今夜ウォッカが滴る肉体』が2009年3月28日(土)、いよいよ発売になります。著者の望月佑さんはまだ23歳ながら、人間の不確かな存在と想いを才気あふれる文章で描く俊英。小説界に誕生した新たな才能に、ご注目ください。
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今夜ウォッカが滴る肉体
発売日:2009年3月28日(土)
著者: 望月 佑
定価:1470円(税込)
ISBN:978-4-06-215128-3
発行:講談社
二十歳の誕生日、映画館、不思議な少女……。暗号めいた出会いがもたらす出来事の意味に“僕”は戸惑う。過去と現在の想いが、今、一つの点で結ばれようとしている。
著者の望月佑は23歳の新進気鋭。人間の不確かな存在と想いを描く文章は、才気に満ちあふれ、読む者の心に迫り、そして唸らせる。
3 僕とアサダが失ったもの
4 過去の定点
5 ルナの傷痕
6 責任の委譲
7 10月17日
8 バースデーサプライズ
9 7・7・7
10 行こう。
僕は高校で付き合った二人目の女の子と初めて寝た。高校2年生の9月。夏なのか秋なのかわからないような半端な時季に、僕は初めて女の子と寝た。時季と同じくらい半端なセックスだった。興奮してがっついたわけでもなく、緊張して冷めてしまったわけでもなく、深く愛し合ったわけでもない。(本文より)
著者インタビュー 物語のテーマは“孤独と喪失感”です。

『今夜ウォッカが滴る肉体』の作者、望月佑さんは今年(2009年)3月、23歳になったばかり。執筆のエピソード、物語に込めた思いをとおして、気鋭の新人作家の素顔に迫ります。

取材・文/須永貴子

『今夜ウォッカが滴る肉体』を執筆するにいたった経緯を教えてください。
僕が書いたコラムのような文章を、たまたま講談社の方が目にしてくださって、「一度、試しに長編小説を書いてみないか?」というお話をいただきました。書き始めた頃は、まさか本当に本になって出版されるなんて思っていなかったので、ビックリしています。もちろん、書き進めるにつれて「本になったら幸せだろうな」という思いが強くなりましたが。
もともと、文章を書くことは好きでしたか?
はい。自分の考えや思いを、話して伝えることがあまり得意じゃなかったぶん、文章の形で吐き出すことが多かったんです。むしろ、文章のほうが素直になれる、と気づいてからは、さらに書くことが増えました。
この物語は、どこから着想を得ましたか?
「二十歳の男の子が一人いて、物語を語り出す」というところから始まりました。大人になりきる前のこの時期は、自分の中に強い印象として残っています。いろいろ悩みはあるけれど、どうしたら解決できるのかも、何をしたら気が晴れるのかもわからない。身動きのとれない、歯がゆい時代。あの時期の感覚や印象を吐き出したくて、この物語を書き始めました。ただ、着地点も、書きたいシーンもまったく考えていなかったので、執筆作業は「面白そうな話が始まったけど、これ、どうなるんだろう?」という手探りの状態でした。ひとつだけ気をつけたのは、最初に張った伏線がだんだん明らかになるという、ミステリー仕立てにするということでした。
ということは、主人公の“僕”には作者の心情がかなり投影されているんですね。
書き始めたときは、主人公が自分の分身になるんだろうな、と思っていましたし、他の登場人物に関してはキャラクター設定も考えて、主人公と差別化しました。ところが、なぜか身動きがとれなくなって、物語がうまくつながらなくなってしまったんです。そこで「もういいや!」と、制約も設定もとっぱらって書き始めたら、思いのほか、みんながちゃんと動き始めました。それぞれが、僕のなかにある気持ちを反映しながら。もちろんそれは主人公にいちばん色濃く反映されているけれど、他のキャラクターたちも僕の一部を背負ってくれています。そのことによって、物語も思いがけない方向に進んでいったし、“ない力”まで湧き出しました。本当に不思議な感覚です。
作品には、月のイメージがちりばめられています。主人公の名前が“十六夜(いざよい)”で、彼が出会う女子中学生が“ルナ”。なぜですか?
月が好きなんです。太陽は、ちょっと自己主張が強くて押しつけがましく感じてしまう(笑)。以前、屋上に出ることができるところに住んでいたことがあるんですけど、そこで夜空を見ながらビールを飲む時間がすごく好きでした。目の前の世界から、ちょっと離れられるし、一人になれる時間。そんなときに月を見ると、落ち着くんですよね。控え目だけれど、もしも月がなかったら、夜は真っ暗になってしまう。そんな存在が好きです。
登場人物も、月のようなキャラクターですね。どこか自信がなさそうで、人から注目されることを避けているタイプ。
冒頭で、十六夜が「押しつけがましい人はあまり好きじゃない」と言っているように、みんな、我(が)も自己主張も強くない。だけど、語りたいことや思うところはたくさんある。それを言葉にしてうまく伝えられないから、本当ならもっと簡単にクリアできる場所で立ち止まってしまっているんですよね。
十六夜は自分にいらついてもいるから、他者にもやや辛辣(しんらつ)ですね。世間や親を自分の世界からシャットアウトしてしまう。
たしかにそうですね。人に対して、強がってしまう。
そんな十六夜が、ラストではちょっとだけ“開いた”気がします。
この作品は、時間の流れとしては2日間くらいの物語なんですね。たぶん、本人は自分が変わったとも思ってないだろうし。人はそんな、急には変わらないですから。だから、十六夜の変化みたいなものも、あったとしても、本当にわずかな一歩だと思います。一歩を踏み出すのって、本当に大変なことだから。
いつか、未来の十六夜が自分を振り返ったときに、「あそこが変化の第一歩だった」と思いそうな2日間です。
これを読んで、「勇気が出ました」と言われるような本ではないですし(笑)。すごく繊細で、小さな話ですけれど、読み終わったときに「何かが動いたな」という感覚は残るんじゃないかなと思います。
執筆中に、読み手のことは考えましたか?
書き方として、物語を1章ずつ書き足すたびに、頭から読み直していったんですね。そのときの視点としては、誰かのことを考える前に、自分が「あ、これ、楽しいな」と思えることをいちばん大事にしました。いろいろな制約はとっぱらって、とにかく吐き出しました。ですから「読者に何かを伝えたい」とか「こうであるべきだ」とか、たいそうなものはないです。ものすごく贅沢な一人遊びをさせてもらったという意識のほうが強いです。でも、この作品を読んで、共感でも反感でも、何かしら思ってくれたらすごいことだなと思っています。
では、テーマはない、と?
明確なテーマを持って書き始めたわけではないですが、強いて言うならば、十代後半から二十歳あたりの、身動きがとれなかった時代の自分を俯瞰(ふかん)して、形にしたかったということですね。結果として浮かび上がってきたのは“孤独と喪失”でした。
自分がやりたいことがわからなかったり、自分になんの才能があるかわからなかったり、周囲の期待に応えようとして無理をしてしまったり。そこで葛藤するキャラクターを、ある種突き放して描いていますよね。
みんな、ない物ねだりなのかなと思います。僕も含めて。求めるものと、持っている才能の違いから、歯車が狂ってしまうこともあると思うし。この視点が自分の中から出てきたことに、自分で驚いています。ああ、そういうことを考えていたんだな、と。
望月さん自身は、編集者によって見いだされた「書くこと」という才能と、今後どのようにつきあっていきますか?
僕は、自分では自分のことを、突出して才能があるとは思っていません。でも、文章を書くこと自体は、日常的に続けていくと思います。誰かに読まれる、読まれないは別として、書くという作業は自分のために必要なことなので。自分の気持ちは、書くことによって整理されて、浄化されていく。今後もそういうふうに書いていければいいなと思っています。
望月佑(もちづき・ゆう)
1986年3月13日、大阪府生まれ。才気に満ちあふれた文章で、人間の不確かな存在と想いを描く俊英。