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世界が認めたオタクの王様 海洋堂 造形師 ボーメ氏:美少女”は自由な世界だ!
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下絵の嘘を理解してキャラの魅力を表現するのが造形師の仕事
大暮維人さんみたいに気に入った絵やマンガ家のキャラクターってあるじゃないですか。それはまだ二次元のモノですよね。それを三次元に置き換える。平面を立体にする作業というのはどう考えてやっているんでしょうか。

いろいろありますが、基本は“カッコいい”という感情でしょうか。ポーズが“カッコいい”、服装が“カッコいい”とか、いろんな“カッコいい”があるじゃないですか。そういうことを気にしますね。人がパッと見て“カッコいい”と思ってくれたら成功。それは師匠である先輩に言われた言葉なんです。『パッと見て人に“カッコいい”と言われたら勝ちやで』と。

一枚絵を立体化しても、人間ってどこか一点を見るわけじゃないですか。女の子だったら、顔や胸、お尻ですね。そういう見せるところに力を入れて、あとは緩やかにとか。そういうことを積み重ねてやっています。うまくいっているかどうかはわかりませんが……。カワイイということも、結局“カッコいい”ということなんです。ポーズがカワイイというのも。

あとは塗りですよね。ぼくは6対4の比率で4は塗りだなと思いますよ。造形師はなぜか塗りにこだわらない人が多いので、それがもったいないなと思いますね。6が塗りになることもあるんですから。

ボーメさんの作品を見ているとちゃんと地に足をつけて立っているものが多いように感じますが、そこも“カッコよさ”にこだわってのことなんでしょうか。


ボーメ氏の“娘”シリーズ第一弾('94年発表)で商品名は『ボーメコレクションVol.1 鬼娘』。デザイン原案は漫画家のうたたねひろゆき氏。
ジャンプしたりして、宙に浮いているポーズというのは、ぼくから言わせれば楽なポーズですね。立たせるということは同時にさまざまなバランスをとらないといけないけれど、針金を使ったりして宙に浮かせると、そういうことを考えなくてもよくなるんです。作るのも楽だし。だから、それはやりたくないなと。基本はやっぱりちゃんと立っている姿ですよ。お客さんにも分かりやすいし。よっぽどのことがない限りは地面に足をつけておきたいと思います。

具体的に“右足を広げる”とか、“手を上げるか”とか、“腰に手を当てる”とか、そのキャラクターにはどういうポージングが一番カッコいいか考えて作りますが、一番難しいのは腰の位置なんです。ぼくは足は長いほうがスラッとしてカッコいいと思っていますから、いつも長めに作るんですが、胴体は短めにしても、今度は腰の位置をどうするかが問題になってきますね。

バランス感を大事にされてるんですね。ということは小顔のキャラクターが多いのも同じ理由なんでしょうか。

そういうことはないんですけど、下絵のバランスそのまんま作ると、長髪の女の子だと頭はどうしても膨らんでしまいますし、胸とかもあるから立体物としては上が重くなってしまって、構図的に不安定になってしまうんです。だから絵のとおりというわけにはならないですよね。絵だと「なんでこんなところに肩があるねん」という位置にあったりしますから、それをうまいことゴマかしながらやるのが立体化ですから。絵の嘘を理解しながら、その絵のポーズなり魅力を表現していくのが造形師の仕事だと思います。

その絵の通りにやらなくても、こうしたほうがバランスよく、カッコよく見えるんなら、そのほうがいいんじゃないかと、だいぶ前に思うようになりました。100%絵のとおりに作ることだけを求めなくてもいいんじゃないかと。それが自分のスタイルですね。まあ、その方針で作業していて、追求していくと締め切りを破ったりもしてますけど(笑)。

ボーメさんの会心作、これが一番カッコよかったという作品はなにになるんでしょうか。

それがなくて困っているんですよ。先輩の目が怖いからというか、トラウマというか、できあがった瞬間に“こうすればよかった”と思うことの繰り返しですよね。芸術家肌という気持ちはないんです。ぼくはいろんな人を見ていて、その人たちに近づきたいと思うだけです。そういう意味でジャンルは違っても海洋堂の中には、あの人に追いつきたいと思う人がいっぱいいるんです。ただ、その点だけでガムシャラに全力でダッシュでやってきたわけです。
サロン化したらオタク文化は廃退する
いまのオタク文化を造形師としてどう思っていますか。ボーメさんはすべてを見てきた世代です。そういう経験から見ていまの時代をどう感じてらっしゃるんでしょうか。

アニメで言うと、いまはスターがいなくなってます、80年代はアニメーターもスター、監督もスターという時代でしたが、それがなくなりましたよ。アニメ誌でもこの人がスゴイとかいう特集にも出てくるのも大抵は昔スターだったオッサンばっかりじゃないですか。アニメーター学院時代の友達が『アニメーターも動かせる喜びを知らなくなってきた』と言っているんです。ぼくらの時代はアニメーターでも動かせる喜びがあったんです。それはちょっとヤバイなあと思いますよ。

しかも作る側がマニアックになってきていて、見てる人を置いていっている雰囲気もあります。特にここ7〜8年くらいの作品の中には、そんなモノが多くなってますよ。『コンバトラーV』のころは勧善懲悪で、その中にドラマがあるというものでしたけど、いまはもっと複雑になっていて分かりにくいものを分かりにくいままに出している。しかも昔は『ライディーン』にしろ『ガンダム』にしろオリジナルのアニメだったじゃないですか。いまはそれもなくなってきてて、お手軽にマンガとかゲームの世界から人気作品を引っ張ってきて「手堅くやろう」というものが多くなってきているのも危険な気がします。

そうするとアニメのキャラは造形する魅力がなくなってきているということなんでしょうか。

もちろん、面白い作品は当然ありますが、確実に減ってきていると思いますよ。気に入っているものを立体化したら売れるかというのも分かりませんから。 “作品は面白い”でも“売れるだろう数”を考えると、それをぼくらが商品とすることはできないというものもあります。

これはアニメだけでなくて、ゲーム業界なんかもそうです。ゲームも一般的なものから、恋愛モノ、パソコンのエロゲーくらいまでジャンルが特化してきて、内容的にもどん詰まり状態ですよね。それにお客さんも気づいてきて、停滞している感じはあると思いますよ。

オタク文化というものは難しい段階にきているような気もしますね。だから、余計にマンガとか小説といった印刷物のほうが面白いと思うようになっています。小説でも『富士見ファンタジア文庫』とかを読んで、挿絵を見て立体にしたいと思ったりしますし。


ボーメ氏の作業場は最近改装したばかり。改装前にほとんどの本を処分したにもかかわらず、新たに購入した本で本棚は1週間でいっぱいに。
アニメやゲームといった動的なメディアに閉塞感は感じているんですね。世に出てるキャラクターを二次利用して、モノを作っている立場だとすると、その状況は厳しいと。ガレージキットってプラモデルの完成度では満足できない人が、もっと完成度の高いものを自分たちで作ってしまえ、という気持ちから始まった模型ですよね。それってある意味、同人誌の立体版みたいな発想じゃないですか。欲しいと思うものを作りたいという気持ちがないとガレージキットを作ろうという気持ちにもならないし、欲しいと思うお客さんも少なくなりますね。

商品を考えると「なにを売ったらいい?」「なにを作ったらいい?」という不安はありますよ。見てる人を置いていっているという面でガレージキットもマニアックになっていますから。買う人がついて来られなくなったら怖いなと思いますよ。

企画担当の白井武士は、『ハイジ』とか『ムーミン』をやってるんです。これらの昔の作品は評価も安定しているし、ある程度の客層はつかめる点も含めて、企画に上がるわけですが、いまって新しい作品が生まれても、おもちゃを作ったと思ったらすぐに消えてしまう使い捨てのキャラクターが多いじゃないですか。ほとんどがそうですよ。最近で残っているものは『エヴァンゲリオン』くらいです。まだ売れてるし。だから、人気作品だけを商品として作るような立場だと厳しいですよね。『コミケ』というものも同じ意味でつらい時期なんじゃないかなと思います。

コミケといえば海洋堂さんが毎年2回主催している『ワンダーフェスティバル』がありますが、そこでも同じような状況にあるんでしょうか。コミケは二次元の二次利用、ワンダーフェスティバルは三次元にして二次利用していると思いますが、すでにあるキャラクターを利用するという意味では同じだと思うんです。そのなかで一次キャラクターを作る世界が閉塞しているとなると、やはり厳しいんでしょうか。

売れるキャラの寿命が短くて、どんどん使い捨てられているという状況は変わりませんよね。むしろ『ワンフェス』のほうが、コミケよりも規模が小さいからよけいにその影響って受けますよ。

昔は造形師同士が東西の関係なく交流して、ガレージキット界を盛り上げていければと思いましたが、そういうのって危険なんですね。交流して、仲良くなって、サロン化するというのは廃退だと思うようになったんです。『ワンフェス』でも交流会になったら終わりなんです。常にほかの人の優れた作品を見て「クソー!」と思わないと。どこの世界でもサロン化すると、その世界は閉塞してしまうなと思います。交流なんかしないで、「作品で語れ!」と思うようになりました。

『ワンフェス』もサロン化して身内だけで居心地よくやっていくのは簡単なんです。けど、少なくともウチの専務はそんなことは絶対にしたくないと思ってるだろうし、ぼくもそうなるんなら『ワンフェス』なんかやめたほうがいいと思う。常に「こういうものを作ってきたぞっ!」というビックリドッキリが『ワンダーフェスティバル』なんです。そうして「どうだ! 見たか!」と言わせたいし、言える作品に出会っていくということが『ワンダーフェスティバル』の意義だと思います。

END  

●造形ルームに潜入!
造形ルームに潜入!
 4分28秒
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 ●影響を受けた本
『月刊モデルグラフィックス別冊 シェパード・ペインの戦車の作り方 Modeling TANKS and MILITARY VEHICLES』(1985年7月1日発行/大日本絵画 )
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『月刊モデルグラフィックス別冊 シェパード・ペインの戦車の作り方 Modeling TANKS and MILITARY VEHICLES』(1985年7月1日発行/大日本絵画 )
「いま、1日1時間は必ず本を読むようにしているんです。小説でもマンガでもなんでもいいから。風呂に本を持って行くこともあります。いまはいろんな本を読みたいですね。本の中から造形のインスピレーションを貰うというのもありますよ。本を読んでたら、それによって得られるものは必ずありますから。ネットでモデルにしたいキャラクターの情報を検索するよりも本で探すほうがやっぱりいいんですよ。
インターネットはすぐに探したいものが見つかりますけど、本だといろいろと読んで、探しながら知りたい情報にたどり着くわけです。その探す行為で覚えるものっていうのはたくさんありますから。色を塗ることもそうですよね。色を塗るときも失敗した色を覚えておくんです」
 


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