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感動を与え続ける若き書の魔術師 書道家 武田双雲氏:筆と墨で世界平和を目指したい!
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庭を眺めていると生物体の輪廻を感じる
ところで、武田さんが仕事場にしていらっしゃる日本家屋ですが、あまりにも書道家にぴったりの物件なので、ビックリしました。

はい、書道家のためにあるようなもんですよ。あ、ちゃんと門から入ってこられましたか?「瑞気集門」と書かれた看板を門に掲げてありまして、さらに門から玄関に至る通路には「気」と書かれた板があったでしょう。あれらが人についている悪い気を落としてくれるんです。ですから、初めてここを訪れる方には、駐車場からショートカットして玄関へという経路でなく、かならず門から入ってこられるように言ってるんです(笑)。

縁側がありますし、なにより庭が広いのが素晴らしいですね。庭の手入れはどうしているのですか?


武田氏の仕事場は一戸建ての日本家屋。門からして雰囲気がある。
ほとんど手入れはしないです。雨が降っても晴れても、どんなときでも365日楽しめます。雪が降ると最高。庭を眺めていると、木が芽吹いたり、枯れたり、花をつけたり、生命体の輪廻(りんね)を感じます。

そういうのは庭があるからわかるんですね。きれいなマンションに住んでいたのでは、気づきません。

人は目で実際に見ないと、なかなか気づかないですね。あるいは土を踏むだけでも、コンクリートとは全然ちがいます。そこには言葉にはあらわせないのですが、いろいろと失われつつある大事なものがあります。借りている身ですが、この家のパワーは想像以上にすごいです。世界中からお客さんが来てくれて、いい縁ができるんです。ただ問題もありまして、重要な打ち合わせをしていたのに、あまりにも心地よすぎて、気がつくと寝っ転がっていたり。仕事をする気がなくなります(笑)。


門に掲げられた板には「瑞気集門」と書かれている。
たしかに仕事を放り出して、縁側で寝っ転がりたくなりますね。でも、それは我慢してインタビューを続けます(笑)。書道は何歳から、どういうきっかけで始められたのですか?

3歳でした。母親が武田双葉という書道家で、よい字を書く人になってほしいと思ったのでしょう。

双雲の「双」は、師匠のお名前から一文字もらったわけですね。

はい。そして、ぼくは雲が好きなので「双雲」としました。

お母さまのご両親のどちらかも書道家だったのでしょうか?

いえ、違います。でも父方、母方、どちらの祖父も達筆でした。どうやら書に関しては興味をもっている家系のようです。

ほとんどの日本人が字に対してコンプレックスをもっている
3歳から書を始められたということですが、そのころのことを覚えていらっしゃいますか?

覚えてますよ。グスグス泣きながら、逃げながらやった記憶があります。字に関しては厳しく教えられました。

厳しいというのはどういうことですか? 何に対して厳しいのでしょう。

字の形と配置、それにつきます。いかに字を美しく見せるかにうるさかったですね。母親から書を習っていたときは、いい気持ちはしない。もちろんそのおかげで、グングン上達しましたが。とにかく一人で書いているときは楽しくてしょうがなかった。字を書くのが好きだったんですね。

幼年時代を過ぎて、小学生時代はどうでしたか?

ほかの書道教室の先生についたりもしました。でも、やってることは同じで、お手本を模写していました。これを「臨書」といいます。今思い出すと、やはり字に興味があったんですね。学校の先生の字、下手な人の字、女の人の字など、マネするのが好きでした。丸文字をつくったりとか。字をうまく書くことに誇りをもっていて、クラスで見せ回ったりとかもしました。

字に誇りをもてるというのが、じつにうらやましいかぎりです。社会人になりますと、何かとパーティに出席することが多く、そのとき受付で記帳するのがイヤでイヤで……。

みなさん、それを言いますね。じつは根本的に根深いところがあって、日本人のほとんどの方が字にコンプレックスをもっている。それは英語も一緒かもしれないのですが、学校教育がコンプレックスを植えつける教育なんですね。基本的に字はうまくなければならないという妄想がありまして、字が下手な人はダメだとレッテルを貼る傾向があるんです。答えは一つだという教育に組みこんで、払い、留め、撥ね、書き順も含めてルールをがちがちに決めて、そのとおりに書かないと間違いであるとして、個性を消してしまっているんです。

コンプレックスが生まれるのは当たり前ですね。

答えは一つという前提で競い合わせる教育では、一切の自由がそこにはありません。そのなかで自信をもてる人は、そのときに1位を取った人くらいでしょう。あるいはスポーツ的な感覚で練習してきた人のみが字に対して自信をもてる。日本人のほとんどが字にコンプレックスをもっていると言っていいですね。

字に対するコンプレックスをもったことはありませんでしたか?

ないです。もちろん字がうまいという自信は人より書かされていたのでありましたし、センスもあると思っていました。それ以上に、字の書き方は一つではないのに学校での教え方はヘンだなと、子供ながらに感じていました。コンプレックスのもちようがないですよね。なんでも吸収しようとする性格のぼくは、下手な字を見てもいいなあと思うんです。この字はいいなあってあるんですよ。丸文字を見ても面白いし。味のある字を見るだけで幸せな気分になれます。

字を書くときに重要なことを教えてください。

コンプレックスをうまくコントロールすることでしょうね。コンプレックスを忘れ、気持ちよく書くということ。そのときになって気にしたってしょうがないわけだから。とにかく楽しく書くことです。また、コンプレックスはうまく使うと、上達につながることもあります。

書道とペン習字とは違うものですか?

かなり共通点があります。字の形、書くときの強弱、スピードはほぼ同じです。ぐっ、すーとか。筆の感覚で書けばペン習字もうまくなる。筆でうまく書ける人はペンで書いても字に立体感があります。同じ太さで書いているようでいて、太い細いがあるんです。柔らかさ、堅さもある。薄い濃いもある。だから、毛筆がちゃんとできている人はペンでも味が出てきます。

日本語は基本的に右手で書くような字の構造になっていますが、左利きの人はどうしたらいいのでしょう。

まったく気にする必要はありません。左利きの方は左手で書いていいんです。片岡鶴太郎さんは右利きなのに左手で書いています。右手で練習することも楽しめれば、なおよいでしょう。

字のうまさを競い合うことには意味がない
書道には流派といいますか、団体はいくつもあるのですか?

いくらでもありますよ。すごい数があります。

段位がありますが、団体ごとに発行するのでしょうか?

そうですね。でも3段と6段を比べて、6段が字がうまいかというとそういうことではありません。

6段となると、それはもう名誉に近いのでは? たとえば柔道ですと、4〜5段までは実力で、それ以上となると名誉に近いものがあります。

そうかもしれません。長くやった人が段位をとれる傾向はありますね。


優しい光が降り注ぐ縁側が気持ちいい。
段位制度についてはどう思いますか?

段位にこだわることはよくないことだと思います。字のうまさを競い合うことに意味を見いだせないから。うまいにも100とおりあるんです。それに下手な人でも、うまくはないけど味がある。歌と同じですよね。もちろん目安としては、書道教室の生徒さんにつけてはいます。でもそれで上とか下ということはない。そんなに段位のことが気になりますか? ぼくはやっぱり段位には興味がない。

不思議だなと思うんです。そろばんの段とかはわかりやすいではないですか。試験があって、試験の結果はデジタルな数字になって、合格か不合格かが判定される。書道の段位は、どうやって決めるのかと疑問に思っていたんです。師範免許のことですが、取得するのに条件とかありますか? あるいは試験があるとか。

これはもう流派で、ぜんぜん違います。大きな協会だと2段で師範になれるところもありますし、6段でということもあります。試験があるところもあります。呼び方も師範、教師といろいろです。

どんな試験なのでしょう?

課題を出したり、字の知識、たとえば書き順とか、あるいは字の歴史とかですね。

武田さんが師範になったのは何歳ですか?

25歳、3年前です。書道を幼いころから続けてきて、書道教室を開きたいので、師範免許をくださいと師匠の母親にお願いしたら認可をもらえた、そんな感じでした。 今は、お弟子さんのなかでも、師範として教室を開きたいという方も出てきましたので、特別授業を施しているところです。

書道教室を開くとお母さまに言ったときの反応は?

「なんとかなる」という言葉をもらいました。母親としての心配と書道家としての期待やうれしさが同時進行だったと思います。(⇒次頁へ

 ●「爆音」を書く!
「爆音」を書く!
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「書道教室が湘南の海に近いので浜辺まで行くこともありますし、近所の住宅街をすり抜けて歩くのも好きです。ルートも時間も決めないで、気の向くままに散歩することが多いですね。小さな発見が楽しいです」(武田氏)
 


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