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世界でただひとりの幻獣採集家 幻獣標本創形師 江本創氏:妄想から生まれるネタは尽きることがない!
       
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取材・文:島田健弘/写真撮影:椎野充/動画撮影・編集:水谷明希  
20世紀末。旧ソ連の科学者アレクサンドル・ヒロポンスキー博士が、奇妙な生物の干からびた遺骸をイギリスで発見した。体長約30cm、兜状の頭部、コウモリの翼のような前肢、後頭部から尾の先まで続く背ビレのようなトゲ状の突起。その外見は伝説上の“ドラゴン”に酷似し、体色が赤いことから“Red Dragon”と博士は命名した。
さらに、博士は世界各地を探索。数々の“幻獣”を発見したが、標本を助手に託し、忽然と姿を消してしまった。その助手こそ、今回登場する江本氏である。氏は博士の功績を讃え、幻獣を『幻想標本博物館』に展示することにしたという――。
幻獣標本創形師 江本創氏
【PROFILE】
江本創(えもと・はじめ)
1970年、兵庫県生まれ。ヒロポンスキー博士の助手として、ヨーロッパを中心に、アフリカ、アジアを探索し、数々の“幻獣”を発見した。博士の失踪後、幻獣標本博物館を開いて館長に。江本氏自身が調査、発見した“悪獣”や多々良蝶介氏の著書に基づき、“幻界灘”で採取した海洋生物などが所蔵されている。
筑波大学では油絵を専攻していたが、途中で版画に変更。1995年、筑波大学大学院修士課程芸術研究課を修了。1999年まで版画(主に銅版画、リトグラフ)を制作。その後、標本作品の制作をはじめ、数々の個展で高い評価を得る。『幻獣標本博物記』を上梓するなど、精力的な創作活動を進めている。
⇒『幻想標本博物館』
ヒロポンスキー博士がイギリスの廃墟で世紀の大発見!
江本創氏
ぼくらが空想しつつも、本当は存在するはずがないと思っていた生き物たちが、江本さんが館長を務める『幻想標本博物館』に何種類も納められていて、見学することができるというのは不思議ですね。

私がヒロポンスキー博士とともに、世界各地を探索したというのはご存知でしょう? 竜、妖精、獣人、悪魔……、あるいはそれらの眷属(けんぞく)と思われる怪物は、差異こそあるものの世界のあらゆる地域で、いまも伝説として語り継がれています。それこそ、はるか昔から。人々の交流もままならない時代に、このような似通ったものを想像力によって創り得ることは可能だったのでしょうか? むしろ、怪物の原型になった“なにか”が実際に存在していたと考えたほうが、自然ではないか。博士はそう仮説をたてたのです。
彼は旧ソ連の科学アカデミーに所属し、また政府の某諜報機関で特務に就いていたとも言われている謎多き人物でした。しかし、そんなこととは関係なしに、私は“幻獣”を追い求める博士の真摯な姿勢に打たれ、助手としてともに行動していました。




Red Dragon:爬虫綱有鱗目トカゲ亜目
採集地 Birkenhead(Wales)
採集年 1999年
撮影 森脇健夫
博士が最初に発見、採取したのが、この“Red Dragon”ですね。

イギリス・ウェールズ地方のバーケンヘッドにある廃墟のなかでした。1999年のことです。この貴重極まりない死骸が昆虫やネズミなどに食い荒らされることなく、こんなにもすばらしい保存状態で残っていたことを神に感謝した、博士はそう語っていました。その後、私もロンドンで同様の生物を見つけました。たまたま迷い込んだ薄暗く細い路地で。それが“Black Dragon”です。体色が黒い以外は、Red Dragonとは多くの共通点をもっているので、同じ種に属する生物だということは間違いありません。

ところで、博士が消息を絶ってしまったというのは本当ですか?

ヒロポンスキー博士と最後に会ったのは、おそらく私だと思います。彼は私に1冊の手記とこれまでに採取した数々の標本を託しました。私は、そのとき博士についていこうと思ったのですが、これを世に送り出すのがお前の仕事だと諭されて……。それっきり博士とは連絡もつかない状態になってしまいました……。

そして、江本さんは『幻想標本博物館』を設立したと。


ヒロポンスキー博士

多々良蝶介氏
そうですね。博士が見つけてきた数々の幻獣。さらに多々良蝶介氏の記した『幻界灘ニ棲ム』をもとに私が“幻界灘”で発見した海洋生物。さらに私自身が都内で発見した“悪獣”が展示されています。

“槌の子(ツチノコ)”まで発見されていたというのには驚きました。

これを採取したのは今年のことです。和歌山県と奈良県の県境の原生林で捕獲に成功したものの、すぐに死んでしまいました。幻の生物というだけあって、どんな扱いをしたらいいのかわからなかったのです。みすみす殺してしまうことになるとは……。
しかし、死骸というものは、じつはけっこう多くのことを語っているのです。たとえば槌の子は長いあいだヘビの一種と考えられてきましたが、トカゲだったことがわかりました。通常、ヘビには瞼(まぶた)や四肢はないのですが、槌の子には瞼もあるし、退化していますが四肢もついています。ですからヘビではなくトカゲの一種と考えるほうが妥当なのです。新種のアシナシトカゲとでも分類しましょうか。

なるほど。しかし死亡してしまったというのは、かえすがえすも残念ですね。

私も本当に残念でなりません。世紀の大発見なのに……。(⇒次頁へ

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ここまでの物語は、すべてフィクションです。実在の人物等とはいっさい関係ありません。
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 ●幻獣を探し求めて
幻獣を探し求めて
 2分34秒
WMPで再生
ドラゴン、アクマ、カッパ、ツチノコ……、はるか昔から語り継がれてきた伝説上の動物たち。“幻獣”探索のために、世界中を放浪した江本氏が数奇な日々を告白。

推奨環境

メディアプレイヤー設定方法

メディアプレイヤー

 ●江本氏の名刺
江本氏の名刺
⇒拡大画像はこちら 
 ●江本氏の本
幻獣標本博物記
『幻獣標本博物記』
2004年2月に出版された江本氏の作品集。幻獣たちの標本が江本氏自身が描いたイラストとともに紹介されている。
 


       
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