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FRAMES INTERVIEW 06 物語の行方がここにある!! 『ゲーム的リアリズムの誕生 動物化するポストモダン2』著者・東浩紀氏インタビュー 文=福嶋亮大 写真=金澤智康
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この3月、批評家の東浩紀氏は前作『動物化するポストモダン』以来5年半ぶりの新作評論として『ゲーム的リアリズムの誕生 動物化するポストモダン2』を発表した。1993年の批評誌でのデビュー以来、フランスのポストモダン哲学、情報社会論、オタク批評など多様なジャンルを横断しながら、そのつどジャンルのルールを大きく生産的に組み替えてゆく仕事を続けてきた東氏にとって、文学評論に的を絞った著書は実は今回がはじめてである。

とはいえ、氏がたとえば「最近のアキバブームやライトノベルブームなどに便乗し、なし崩し的にサブカル評論を出した」などと考えるのは明らかに筋違いだろう。そもそも、彼の文学への接近は、むしろそのブームの直前に始まっている。特に、2001年に代表作『動物化するポストモダン』を発表してからは、2003年に本書の元論文が掲載された雑誌『ファウスト』の立ち上げに関わりつつ、新しい考え方を持った多くのクリエイターたちと対談や交流を積み重ね、オタク系文化のあり方に一石を投じ続けてきた。本書は、その多くの関わりのなかで精錬されたものであり、日本の伝統的な批評からするとまずその成立のプロセスからして規格外の広がりを持っている。本書ではゲーム的な技法として「リプレイ」の感覚が重視されているが、ある意味では、この本そのものが2000年代のテクスト文化の最も濃い部分を根こそぎ「リプレイ」するような評論になっているわけだ。

そんな本書について、今回東氏へのインタビューが実現した。以下示されるように、執筆に到る経緯から、前著との比較、議論のスタイルの変化、さらに今後の批評のあり方に到るまで、さまざまな興味深い話を聞けたと思う。いつもながらきわめて率直に語る東氏の言は、より広い文脈で本書を読むきっかけとなるだろう 。
ゲーム的リアリズムの誕生 動物化するポストモダン2
前作『動物化するポストモダン』より5年半を経て刊行された待望の続編。本書では、前作の問題意識(オタクの消費行動を分析することで現代社会を読み解く)を引き継ぎつつ、さらに「涼宮ハルヒ」シリーズや桜坂洋氏の『ALL NEED IS KILL』などのライトノベル、『ひぐらしのなく頃に』などのゲームを読解することを通じて、日本の物語(文学)の行方について解いていく。詳細はこちら
 
ゲーム的リアリズムの誕生 動物化するポストモダン2
福嶋亮大(FUKUSHIMA, ryouta)…1981年生れ。評論家、中国文学者。『波状言論』に投稿した舞城王太郎論で二〇〇四年にデビューした後『群像』や『ユリイカ』にて活動する気鋭の論者。
ブログ http://blog.goo.ne.jp/f-ryota/
ところで、本書で扱われるのは文芸誌で発表される小説ではなく、ライトノベルや美少女ゲームであり、しかもそれらの作品を単なる興味本位ではなく、きわめて「知的」な営みとして捉え直している。そういう態度は、もしかしたら一部の新しい読者を戸惑わせるかもしれない。しかし、そういう批評のあり方は、むしろ東氏においては初期から一貫していると言うべきだろう。たとえば、東氏の最初の研究対象だったフランスの哲学者ジャック・デリダには、「脱構築」という概念がある。その脱構築を、デリダはあるところで「生殖的」であると規定している(『他者の言語』)。硬直したシステムを単に理論的に食い破る(=脱構築する)だけではなく、その先に、新しい物事を生みやすい「環境」をたえずつくり続けること、それがデリダの哲学に宿る倫理なのだ。東浩紀という批評家は、まさにそのデリダ的な「脱構築=生殖の哲学」をいま最も力強く、また最も具体的に実現しているひとりだと言っていい。

本書もまた、「文学」の可能性や範囲を狭く見積もってしまう考え方を、大きく動揺させるものだろう。今回のインタビューでも、東氏は来るべき「文学史」の可能性についてこう語っている。


ゲーム的リアリズムの誕生 動物化するポストモダン2
東浩紀(AZUMA, hiroki)…1971年生まれ。表象文化論、情報社会論などを専門とする批評家。2007年度は北田暁大との共著『東京から考える 格差・郊外・ナショナリズム』、『ゲーム的リアリズム 動物化するポストモダン2』『コンテンツの思想』『文学環境論集 東浩紀コレクションL』など精力的に著書を発表するほか、桜坂洋氏との共同作品『ギートステイト』を公開している。
ギートステイト http://blog.moura.jp/geetstate/
僕の今回の本は文芸評論の「一般化」を試みたものです。僕は、10年後、20年後に、「純文学の外側から何人かいいライトノベル作家が出てきて、いい作品を書きました」という単純な文学史が書かれるのが我慢できなかったんですね。純文学は文学の小さな一部でしかない。文学の世界はもっと広大なわけですよ。そのなかに、ジャンル小説もライトノベルも、そしてケータイ小説もある。その広大な空間を扱う文学史が書かれてほしい。ところが、いままでは文学史は常に純文学史であり、純文学の外側からどんなひとが「越境」してきたかという、ある意味では傲慢な視線しかもてなかった。僕はその視線を相対化したかったんです。たとえば、「舞城王太郎というエンターテインメント出身の作家が、ようやく文芸誌で『文学』を書き始めた」と文芸評論家は言うわけだけれど、それは僕の枠組みでは「環境の選択」でしかない。舞城が文芸誌の環境で何をやったか、エンタメの環境で何をやったかを読めばいいだけの話であり、大衆文学から芸術への「越境」が起きたわけではない。そういう相対化された文学観を提示したかった。

一般的な文学史的観点を採用する限り、現代のテクスト文化の多くの可能性は葬り去られてしまう。だが、文学史というのが本来、文学の土台を整理し、次の世代に効率的にバトンを渡すためのシステムであることを考えれば、それはほとんど文学史の自己矛盾でしかない。東氏は明確にそれに反発している。事実、東氏の試みる相対化は、「文学とはこうあるものだ」という予期を攪乱すること、つまり文学を取り巻くシステムを変えることに向けられていた。

そして、現在の文学システムは、オタク系の実作を中心にして、いまや作品を生殖させる環境そのものをメタ的に組み込んでいる。いま文学=虚構は、作品の枠を飛び越え、みずからを再生産する広大なコミュニケーション・ゲームの世界にまでそのセンサーを伸ばし始めたのだ。したがって、文学が提供する情報はおそらく質的に変わりつつある。「ゲーム的リアリズム」というのは、そういう状況を捉えようとした概念にほかならない。

誰もが気付いているように、ここ数年の情報環境の変化はあまりにも巨大である。文学もその例外ではない。実際、ライトノベルや美少女ゲームが、ウェブ上での評判や批評と深く関わっていることはよく指摘されるし、そういうデジタル領域を中心とした無数の「つながり」は本書のひとつの主題でもあった。

では、2003年に『ファウスト』で連載が始まり、大幅な改稿の上で書籍化された『ゲーム的リアリズムの誕生』において、東氏を取り巻く「環境」はどういうふうに作用していたのだろうか。


僕はもともと『動物化するポストモダン』の続編をやるつもりはありませんでした。それが、『ファウスト』の太田(克史)編集長の勧めによって、連載の副題を「動物化するポストモダン2」と名付けることになった。

あと、これはいまは忘れられていることですが、連載開始当時の『ファウスト』の盛り上がりにははてなダイアリーが大きな役割を果たしている。『ファウスト』創刊には、単純にライトノベルブームの先駆というだけではなく、ネット・ブログを中心にした新しい言説空間の誕生という側面もあったわけです。僕はそういう流れを全体的に応援したいと思っていて、『ファウスト』連載は、だからとても時事的な問題意識で始めました。ところが、太田くんのせいで(笑)「2」と名付けてしまったため、連載途中から、「動ポモ1」の問題意識をアップデートして、大きな広がりを持たせないといけなくなってしまった。というか、自分自身でそう思いこむことになった。それで妙に改稿に時間がかかったわけですね。

もともと僕は、情報社会論は情報社会論、オタク文化はオタク文化という具合に、仕事を切り分けています。だから、もしそんな名前がついてなかったら、この論考は、『ファウスト』に連載された、『ファウスト』とその読者を応援する評論で終わったと思う。そういう意味では、かなり外発的にでき上がった本です。
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