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| 新世代アニメーションを切り拓くデジタルコンテンツの申し子達の軌跡を追うシリーズ、大好評第2弾!(2006.04.24) |
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この作品、『ほしのこえ』は2000年、第12回「CGアニメコンテスト」(2000年)(※1)でグランプリを受賞した新海誠の第2作目である。 音楽、メディアミックス系の同人誌即売会「M3」(2000年11月開催)で販売された『彼女と彼女の猫』のCD-Rに予告編が収録され、その後、新海誠の個人HP「Other voices─遠い声─」では制作進行状況が順次更新されていき、徐々に注目を集めていく。 そしてついに公開。3月1日まで上映された1ヵ月間、ほぼ満席状態が続き、トリウッド史上最高の動員数、3484人を記録した。 当時の状況をトリウッドの代表・大槻貴宏氏はこう語る。 「いまでも強く記憶に残っているのが最終日です。最終日は2時から5回上映の予定でしたが、昼の12時を回った時点で、すでにチケットが取れませんという状況でした。それで急遽、追加上映を決めたら、並んでいたお客さんが嬉々として友人たちに『追加上映されるから何時の回なら観られる』とメールを打ち始めて……。結局、最終回の終了は夜の12時を回っていましたが、みんな満足した顔で帰って行きました」。 この後、『ほしのこえ』は4月にDVDとして発売され、国内で7万5000枚、海外16ヵ国で7万5000枚ものセールスを記録し、現在も売り上げを伸ばし続けている。一般的に、地上波で放映されたアニメ作品のDVDの売り上げは平均すると3000〜4000枚。5000枚売れれば成功といわれている。インディーズのアニメ作品が国境を越えて広がり、商業アニメを超える大ヒットを記録したのだ。 「『ほしのこえ』はひとつの現象だった」(DoGA代表・かまたゆたか氏)。 『ほしのこえ』現象は多くのCGクリエイターに様々な影響を与えた。今回登場する二人が聴いた‘こえ’とは……? ※1…CGアニメーションの黎明期、1989年からはじまったDoGAが主宰する自主制作のCGアニメを対象としたコンテスト。新海誠、ロマのフ比嘉をはじめ、多くのCGクリエイターを世に送り出している |
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4月8日から28日まで下北沢トリウッドで開催されているコミックス・ウェーブ主催の「新世代アニメーションまつり(※2)」で『はなれ砦のヨナ』の公開に先だって行われた監督・竹内謙吾氏の挨拶だ。 2001年、秋。ハワイのスタジオで『ファイナルファンタジー・ザ・ムービー』の制作(所属は爆煙やエフェクトなどを担当する「VFX」チーム)にあたっていた竹内氏は、インターネットで公開されていた『ほしのこえ』の予告編に出会った。 「大ショックでした。1人でこれほどの作品を作っている人がいるのに、俺は何をやってるのかなと。それでこのプロジェクトが終わって、帰国したら会社を辞めて自分の作品を作ろうと決心しました」 そもそも竹内氏がスクウェアに入社したのは必ずしもゲームが作りたかったわけではなかった。ただエンターテインメントな映像作品を作りたいという思いがあった竹内氏にとって「当時、ゲーム会社でムービー制作の最高峰にあったスクウェアは非常に魅力的に映った」という。 京都大学工学部を卒業後、就職も院への進学もせず、CG専門スクールデジタルハリウッド東京本校に入学したのもそんな思いからだ。卒業してもう一度、専門学校に入学するということが、なかなか大学の友人や先生にも伝わらなかったという。 「“入学? 就職じゃないの?”とよく言われました(笑)。学生時代に『ジュラシックパーク』('93)や『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』('95)といったCG技術の進化を目の当たりにしたので、漠然と映像系のエンターテイメント産業に入りたいと思ってました。研究室で研究していた制御工学をやっていても、その方向には行き着かないんですね。それで3年になって進路を決めるときに、専門学校にいってスキルを得よう思ったんです」
“与えられた中で最善を尽くすことに喜びを見出せるタイプ”だという竹内氏。大作のゲームや映画に携わっているということの喜び、それが世に出たときの興奮も常に持っていた。言い方を変えれば、現状に満足していたともいえる。 ただ、中学時代から『指輪物語』や『グイン・サーガ』といったファンタジー小説に親しみ、「そんな世界を舞台に自分で物語を作って映像化してみたい」という思いはくすぶっていた。そんな彼が『ほしのこえ』を“聴き”、個人制作に目覚めた。 スクウェアを辞め、フリーランスとして映像制作を行う──。 すでに結婚もしていた竹内氏にとって、大きな挑戦だった。 「妻には折に触れて、いずれ自分で物語を作って発表したいということは伝えてて、辞めるというときも素直に納得してもらいました。どんな話にしようかと構想を練りながら資料と称して大量の本やDVDを買ったり、映画に行ったりしましたけど、完成させないと合わせる顔がないので、そういう意味でも必死でした(笑)。辞めて1年後にようやく1分ほどのパイロット版が完成して、それを『ほしのこえ』をプロデュースしたコミックス・ウェーブさんに投稿して、結果を待ちながら就職活動もしようと思ってたら連絡をいただいたんです」 コミックス・ウェーブは、クリエイターのマネージメントからはじまった企画製作会社だ。契約した漫画家・イラストレーター・映像作家といったクリエイターたちの版権管理・キャラクター商品開発・プロデュースを行っている。『ほしのこえ』もそのひとつだ。 『ほしのこえ』で目覚めた竹内氏は、その出発点に同じものを求めたのだ。 このパイロット版「ヨナ」は、まだイメージの断片でしかなかった。ストーリーとして、完全には成立していないおよそ1分間のムービーシーンだったという。 「まだ、ストーリーとしては未完成でしたが、劇場レベルといってもいいくらいの、非常にクオリティの高いムービーが送られてきて、ビックリしたんです。すごい才能を感じてすぐに本人に連絡しました」(コミックス・ウェーブ プロデューサー川口典孝氏) 竹内氏は脚本家・ごえもん氏の協力を得てストーリーを完成させると、2003年の秋から映像制作に入った。制作中の作業時間は一日およそ12時間。完成は2005年秋だった。 ※2…2006年4月8日〜28日まで下北沢トリウッドで開催中。くわしくはコチラ ※3…167億円の巨費を投じて製作されたスクウェアが3年半かけて製作したフルCGムービー。2001年公開 |
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「組織や社会の中で、決められたサイクルで生活していると、いま自分が何のために、何をしているのかということが見失いがちになります。ただ仕事してる。ただ勉強してる。ただ食べてる、生きてる。主体性もなく、日々を漫然と生きているんじゃなくて、目的、主体性を持って生きていく。そういう“主体性の回復”というのがこの作品のテーマになっています。一歩踏み出す勇気。それを描いた作品です」。 竹内氏の第2の母校デジタル・ハリウッド大学の学長・杉山知之氏は「ヨナ」をして“ひとりFF”と呼んでいる。たったひとりのクリエイターが、ゲーム「ファイナルファンタジー」のムービーパートと同等のクオリティを実現させていることからつけた呼称だ。 『ファイナルファンタジー ザ・ムービー』は数百人のスタッフがおよそ3年半の時間をかけて製作した。それを竹内氏は、たったひとりでクオリティとして遜色ないレベルで34分間のフルCGアニメーションを完成させた。しかも設備の整った専門のスタジオではなく、自宅で制作したのだ。 トリウッドでの舞台挨拶で竹内氏はこう語った。 「これは大きなスタジオで作ったアニメーションではありません。大勢の応援してくださった人たちがいて、ぼくの中にある情念や小さいころから伝えたいと思っていたことを注ぎ込んだ作品です。短い時間ですが、どうぞお楽しみください」 『ほしのこえ』を“聴いた”男が、『ほしのこえ』が花開いた地で、自分の作品を上映した。作る人の気持ちが受け継がれていく、その最前線に竹内氏は立っている。 |
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「『ほしのこえ』以前からこの業界に身を置いていたひとりとしては、以前と以後で明らかに空気が違っているんですよ。実感としてそう感じます。ぼく自身、テンションがすごく上がりました。2003年にディレクションズのプロデューサーの長江努さん(※4)からオファーをいただいて『ペイル・コクーン』を作りはじめたのですが、燃えましたね」 「これまで表現しようとしたのは“飽きないアートアニメーション”という感じでしたが、もっと観客を意識した物語作りをしようという意識が強くなりました」 長江氏とは時間をかけて打ち合わせを行ったという。 「最初は一個ずつダメだしされたところを潰しながら作ったんですね。よくわからない、もっとよくストーリーを練りこめとか、長江さんにアドバイスをいただきながら、ストーリーを完成させました」 『ほしのこえ』で変わったのはクリエイターたちばかりではない。『ペイルコクーン』の販売元は大手レコード会社、エイベックスだ。『スキージャンプペア』(真島理一郎氏)『鉄路のかなた』(御影たゆた氏)の販売も手がけるエイベックスは個人制作のCGムービーにいち早く注目している。 「今はインディペンデントな作品がきちんと探され、見てもらえる時代だと思います。コンテンツの質は値段と関係ない。不興だからこそ心に響くものが売れる。そういう作品を製作支援するのが仕事だと思っています」(エイベックス・エンタテインメント映像事業本部部長・穀田正仁氏)。 『ほしのこえ』というインディーズ作品が、ビジュアルエンターテインメント業界のメジャーを動かしたのだ。 ※4…映像コンテンツプロダクション「ディレクションズ」のプロデューサー。同社はNHK BSで放送中の「デジタル・スタジアム」の制作も行っており、長江氏は「デジスタ」の番組スタート時からプロデューサーをつとめている |
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天上へ伸びる螺旋階段、むき出しの配管が張り巡らされた居住空間、彩り豊かな過去の映像と色あせた現代……。『ペイル・コクーン』の特徴であり、魅力のひとつに緻密な世界描写がある。漫画でもアニメーションでもそうだが、線が多ければそれだけ仕事の総数は増える。できるだけ線を少なくするというが、映像制作のコツのひとつであるといえる。 それを吉浦氏はこれでもかという緻密さで描く。まさに自身の限界に挑戦したのが、この『ペイル・コクーン』だった。 「作っていると、ひとりでやることのマイナス面というのがドンドン見えてきました。たとえば絵のクオリティを保とうとすると、別の箇所のクオリティが下がってしまったり……。それらのすべて維持しようとすると、ひとりだとどうしても到達点に辿りつくまでに、時間がかかってしまいます。かなり効率の悪い作り方なんですよ。今回はあえてひとりで挑戦してみたかったというのがありましたが、これが最後ですね。これからは自分のコントロールが利く範囲の人数で漫画家とアシスタントのように作っていきたい」 卒業後も、福岡の実家でひとり作り続け、丸一年を費やして『ペイル・コクーン』は完成した。そこで得た結論が、ひとりで作ることにこだわらないということだった。 「これからは比較的短いスパンで続けて作品を発表していこうと思います。そして商業アニメ、大手とは違う面白さを提案していく。でないと個人でやる意味はないですから」 《次回予告》第18回CGアニメコンテストの模様をレポート。新しい才能が誕生する瞬間を目撃せよ!予告編が上映されるロマのフ比嘉氏の新作についてもいち早くお伝えする。お楽しみに! |
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