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「直言」スペシャル鼎談:宮崎×平野×植草

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宮崎:それで、腰砕けになった民主党の話をしていたところなんですが(笑)、かりにですね、ライブドア問題が起こったときに、責任追及の問題をですね、政治家へのカネの流れだけにスポットを当たるような方向にしたんだけれど、本来的にはもっと違ったところ、つまりライブドア的な、あるいは村上ファンドもそうなんですけど、ああいうあり方、規制緩和という流れについての追及をやられてしかるべきだったんだろうと。政治的背景としての問題としてですね、この点に関して植草さんは、ライブドアのようなものが出てきた、あれだけのことをカネをかき集めてやってしまうということに関して、竹中が進めてきた経済政策との関係の中で、どういうふうに見ていけばいいんでしょうか。

宮崎学×平野貞夫×植草一秀

植草:去年の9・11総選挙の時、私は岡田さんにも手紙を書き、この状況では民主党は大敗する、戦略を変える必要があると伝えたんです。民主党はそもそも総選挙の時の争点の打ち出し方に失敗している。もっとも、民主党は結局争点を打ち出さなかったのですが。民主党は、ひたすら「政権交代したい」としか言わなかった。対する小泉自民党は、「公務員を20万人以上減らす改革をやるんだから改革を進めさせてくれ」と訴えた。何も知らない国民は小泉政権が何かいいことをしてくれるような錯覚を持つわけですね。で、小泉政権はホリエモンを「がんばった人が報われる社会」の象徴的な成功事例として、「改革の旗手」としてかつぎ上げたわけです。
 ところが、ホリエモンが今回こういうことになって、ホリエモンが象徴していたもの、「弱肉強食」、「市場原理主義」、「拝金主義」。そして外交でいえば「対米隷属=外資優遇」。結果としての「格差社会の全面容認」、「弱い者は消えろ」というコンセプトに対する激しい揺らぎが選挙後初めて噴出し始めたのだと思います。
 民主党は本来、昨年の総選挙でこうした争点を明確にし、自民党の基本コンセプトを明確に浮き彫りにして、それに対する対案を具体的に示すべきであった。基本的な政治信条、政治哲学において小泉自民党を徹底的に追及し、小泉自民党の本質を浮かび上がらせるべきだった。こうした本質論を抜きにして、政治家のカネにまつわるスキャンダルだけを取り上げる、成果があがれば面白いのかもしれませんが、それだけしかやっていない。私は去年の総選挙に際して、明確な重大争点が少なくとも二つ挙げられると言った。一つは、「本当の改革とは何か」という問題です。小泉首相は郵政民営化が改革の本丸だと言っているのですが、民主党は、「本当の改革は天下りの全面廃止」だと言うべきであると私は訴えました。
 小泉自民党は、4年以上も天下りに対してまったく何も対応していない。たとえば、テレビでの政党コマーシャルで、「郵政民営化と天下りの全面廃止、あなたはどちらが本当の改革だと思いますか? 民主党」などと訴えるべきだった。
 改革の入り口・出口という話がありますが、小泉政権は郵貯・簡保・年金がお金の入り口であるとの意味で「まず郵政から」と言ったと同時に、郵政を「突破口」として、もっと広く深く変革を進めてゆくようなイメージの話を繰り返し唱えていました。改革の本当の対象は何かと言うと、財政投融資でいえば、郵貯・簡保・年金で入った資金が特殊法人や公益法人に配分されてゆく、その対象の特殊法人、公益法人こそが「本丸」なのです。70余の特殊法人、2万6000も存在する公益法人の多くが、まさに「日本のブラックホール」なんですね。ここを根本から整理するのが「改革」なんですね。その本質は「郵政」ではなく、「天下り」なんです。「天下り全面廃止」こそが「真の改革」だということを明確に示し、小泉自民当に対して民主党は真正面から「改革真っ向勝負」をやるべきでした。
 もう一つのテーマは「弱者保護」です。去年の夏、国会周辺では障害者自立支援法反対の障害者の方が連日の座り込みをしていました。マスメディアはこの事実をほとんど伝えませんでした。がんばった人が報われるべきというのは正論だと思いますが、本当に社会が豊かであるかどうかの判定基準は、「豊かな人がどこまで豊かになれるか」ではなく、「本当の弱者に対して社会がどこまでケアできるか」に置かれるべきだと思うんですね。「天下り」のような特権者に対する利益供与はばっさりと切り込む一方で、真の弱者に対しては完全なケアを示す。ここに民主党の独自性をはっきりと打ち出すべきだと私は思いました。
 「効率的だけれども温かみのある政府」、あるいは「効率的だが弱者をしっかり支える民主党」という政治信条を明確に示すべきだった。この立場に立つとき、「障害者支援自立法」の是非を問うことは非常にわかりやすい政策対応だったと思うのです。法律の内容を知らない方は誤解するかもしれませんので補足しますと、「自立支援」というのは言葉の偽装で、法律の内容を性格に表現すれば「障害者支援削減法」です。真の弱者である障害者に対してまったく冷酷な対応を進めてきたのが小泉政権です。
 解散で法案は廃案になっていましたから、選挙後の国会での重要法案だったわけです。さらに一つ付け加えれば、小泉政権の四年半は「対米隷属」の四年半でした。イラク問題、新生銀行上場、郵政民営化法案など「対米隷属」以外の何者でもありません。「対米隷属」でこのまま進むのか、それとも、表現するなら「独立自尊」でいくのかということですね。
外交を含めた三つの「論点」、真の改革をめぐる正面からの論争、弱者保護の是非、そして対米隷属か独立自尊か。政治信条、政治哲学の論点を明確にして総選挙を戦うべきだった。小泉政権のイメージと重なる「弱者切捨て」や「弱肉強食」や「拝金主義」などを象徴するもっとも分かりやすい存在がホリエモンだった。
 今回の事件をてこに小泉政権の本質を浮き彫りにし、国民を眠りから覚まさせ、再考を促す戦術が取られていれば展開はまったく違ったものになったはずです。それが民主党の大失策によって、かえって武部幹事長に英雄気取りになられたのではあいた口がふさがりません。
 民主党の前原代表の責任は重大です。大事なことは自分が党首でいられ続けるかどうかではなくて、民主党に投票した有権者の立場に立って党首としてなすべきことを考えることです。政党は党首の私有物ではないのですね。国民の票を大量に背負っていることを自覚した行動が求められています。現状では、党首が先頭に立って、自分の利益のことのみを考えているように見えます。