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直言増刊2号・宮崎学×安田好弘×魚住昭「検察国家日本を斬る」

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安田:というよりね、迅速化っていうのはむしろ思想とかあるいは政策で出てきたものじゃなくて、現場の裁判官とか裁判所の事務体制の要請なんですよ。長ければ面倒臭い。多数の資料があるから裁判官はいっぱい読まなきゃならない。そういうものから、今ほどは激しくないけども、迅速化というのは例えば東大裁判(1969年の東大安田講堂占拠事件。弁護人・被告人の出廷拒否闘争が問題になった)とか、あるいは連続企業爆破事件(東アジア反日武装戦線を名乗る過激派による三菱重工ビル爆破など。1974〜1975年)でもそうだけど、裁判所が一番最初にやるのは、1ヵ月に4回法廷を開くと。で、100回指定とかでやり続けてきたわけですよ。それはおかしいと。スピードの問題ではなくて、時間をかけて真実を見極めていくというのが裁判ではないかということで、弁護士と被告人が一体となって抵抗し、弁護士会もそれを直接・間接にバックアップしたから、それなりに歯止めがかかってきたわけですね。

検察国家日本を斬る 宮崎学×安田好弘×魚住昭

しかし、現場サイドは、弁護士らの抵抗にあって、忸怩たる思いをしてきたんでしょう。世の中が変わって、「早く死刑にせよ」「早く麻原を吊るせ」という圧倒的な世論を背景にして、自分たちの事務的な要請をいかにも崇高な理念であるかのように仮装して作り上げたのがこの間の裁判迅速化法であり、今回の改正刑事訴訟法の制定なんですよ。ですから、もともとは実にくだらない手抜きの話だったんですよ。だから、今までだったら恥ずかしくて言えなかったことですよ。無罪を争って第1審で勝つには、最低でも4〜5年はかかる。無罪が確定するには、10年や15年なんかざらです。ところが、そういうのをまったく無視しちゃってね、「早く終わらせろ」という話は、「とりあえず有罪にせよ」ということでして、裁判迅速化法とは、つまるところ、法律が誤判を認容したということにほかならないんですね。

ところがね、実は、今、私が話したことは、全部目眩ましでして、今回の裁判迅速化法の本当の目的はね、刑事ではなく民事なんですよ。例えば特許権の差し止めとかね、企業に対する損害賠償とか、ああいうものを早く終わらせろと。企業のニーズなんですよ。民事関係訴訟の迅速化を刑事関係をバネに実現したんです。

だから今回の裁判迅速化が出てきたのは、実は麻原公判ではなかったんです。アメリカ型の裁判の迅速化なんですよ。企業にとって裁判が迅速に解決するというのは、企業利益と一致するんです。なぜかというと、企業は100人、150人の弁護士を雇えるんですよ。民間が、個人が、裁判を起こすといったら弁護士は1人ですから、なかなか勝ち得ない。迅速化すれば必ず企業が勝つし、国賠でも国が勝つんですよ。特許権に関する裁判は特許権を持ってる側が必ず勝つんですよ。

検察国家日本を斬る 宮崎学×安田好弘×魚住昭

宮崎:力のある者が必ず勝つという……。

安田:裁判の迅速化というのは、実はね、裁判における規制緩和なんですよ。日本をアメリカと均質化しようというアメリカ資本の強い要請でもあるんです。そして、規制緩和イコール裁判の民営化なんです。裁判の民営化っていうのは、裁判を競争原理の問題、言い換えれば、利潤の問題で解決するっていう話なんです。カネを持ってる人間が勝つっていうね。

宮崎:だから、アメリカ型の訴訟社会になるということを前提にして、それだったら、何でも裁判で決着つけるというふうにしていった場合には、力のある人間にとってはそのほうがいいんだと。
こういうことになるわけですね。

安田:そうだしね、裁判を「個人の怨念」でずっとがんばって5年も10年も一生懸命がんばっている人がいるわけですよ。そんなヤツはスッパリ切り捨てろと。

検察国家日本を斬る 宮崎学×安田好弘×魚住昭

魚住:アメリカのスタンダードで日本もやってくれないと困るよという話なんですよ。そういうふうな圧力というのは、耐震偽装の話でも、まったく同じ現象なんですね。民間確認検査機関は、1998年の建築基準法改正で導入されたわけだけども、あれは結局、日米構造協議が始まった中曽根内閣の時から、既に確認検査の効率化・スピードアップ化というのはずっとアメリカが要求してきたことなんですね。それに応える形で‘98年の改正で民間確認検査機関、確認の民営化ですね、実際は自治体がやってたのを民間がやることによってスピードアップする。スピードアップしてくれないと、従来のように2ヵ月も3ヵ月もかかるようなことでは困りまっせ、というのは最初からアメリカから出てきてるわけですよね。それに対応する形で出てきた法改正なんです。まったく同じですよ。今、安田さんが言ったことと。

全部アメリカのせいにしようというわけじゃないけれども、アメリカのそういう要求に呼応する勢力がいるわけですよ。日本の中にね。それで単純に言うと儲ける人間がたくさんいる。いるから、アメリカの要求を自分たちが儲けるチャンスみたいな形で、日本の法制度を変えていくという動きがずっと‘90年代からある。どの業界を見ても同じことが起こってる。