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直言増刊2号・宮崎学×安田好弘×魚住昭「検察国家日本を斬る」

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安田:なんか、佐藤優さんもそうだよね。「ラスプーチン」て、本当にいい表現。的確だよ。

検察国家日本を斬る 宮崎学×安田好弘×魚住昭

宮崎:その佐藤優さんにつながる話なんだけど、佐藤さんが『国家の罠』という本を出した。鈴木宗男さんの事件と佐藤さんの事件があるわけだけど。東京地検特捜部の捜査の国策性っていうのかな、魚住さんは検察をずっと見てきてるから、たとえばリクルートがあって、その前にロッキードがあって、いろいろあるんだけど、そのいわゆる国策性っていうのは、どういうふうな形で行われたんだろうかと。

魚住:言っちゃえば、捜査というのは全部国策なんですよ。ただね、その国策性が結果として出てくるやつと、途中から出てくるやつと、最初から出てくる捜査があるわけ。しかも、その国策性というのも、人によって意味が違ってて、佐藤さんが言ってるのは、「時代のパラダイムの転換」なんだけど、僕が言ってる国策捜査ってのは、始めにターゲットありき、なんです。要するに、「コイツを逮捕する」という目標を設定したうえで、後付けで捜査するっていうのが国策捜査だと、僕はそういうふうな言い方をしていたわけ。

宮崎:そのターゲットを決めるのに国策があるということ?

魚住:そうそう。佐藤さんも言ってるけど、「時代の雰囲気」で、コイツを逮捕しないと検察がもたないっていう(笑)、から、やっちまえと。あとは何でもいいから、理屈つけちゃえと。始めに逮捕ありきなんだと言ってきたんだけどね。だから、そういう意味では国策捜査っていうのは、ものすごい定義がバラバラなの。しかも、その国策性というのは、どの時点で出てくるかというのもみんな違う。だから、それを一緒に包括する定義というのは……たとえば政界汚職だったら、ある疑惑が起こってきて、それを調べていったら、最終的にこの黒幕に到着したと。この黒幕の容疑を固めたうえで、逮捕するというのが、ある意味では特捜検察の理想モデルなんです。それから外れたものを「国策捜査」と、要するに理想的なモデルの捜査でないものをそう言ってるような気がしますね。

宮崎:それは、魚住さんの司法記者としての経験から見て、特捜部が動いたいろんな事件がありますけど、これというのは、だいたい理想とするモデルどおりにいってるほうが多いのか、それともそうじゃない形が多いのかどうか。

検察国家日本を斬る 宮崎学×安田好弘×魚住昭

魚住:いえいえ、全部理想的にいってませんよ。だから、この前も佐藤さんと話してて、「検察神話」というのがものすごい力を持ってる。僕もその神話を作ってきた一人なんだけども、その神話っていうのは、1954年の造船疑獄(計画造船で贈収賄が発覚。政財界から逮捕者合計71名)で作られたんです。犬養健法務大臣の指揮権発動がありましたよね。検察が政界の中枢の腐敗を摘発しようとしたら、政界が指揮権を発動してダメになっちゃったというんだけど、あれはものすごく検察にとって大きな事件で、要するに政界が加害者、検察は被害者。「悲劇のヒーロー・検察」というパターンを造船疑獄で作っちゃった。それは誰が作ったのか。一つはね、当時の戦後最大の検察官僚の馬場義続(ばば・よしつぐ。‘64年検事総長)って人なんだけど、もう一人は誰かっていうと、作家の松本清張じゃないかなあと、ある新聞記者が言っていた。清張は『検察官僚論』を書いてますから。

宮崎:『現代官僚論』(絶版)の中にありますね。

魚住:悲劇の検察というイメージをあれで強烈に作っちゃって、そのイメージがロッキード事件で立花隆によって確立された。この時は悲劇じゃないけれども「正義の検察」としてね。で、リクルート事件以降は、僕らが書いたわけだけど、正義のイメージがずっと作られてきたがゆえに、その捜査ひとつひとつが持っている杜撰さとか、不合理さとか、そんなのが全部捨象されて、理想的なモデルに合致する部分しか表面に出なかったわけです。ようやく最近になって、これが崩れだした。村岡兼造氏(2004年に逮捕。日本歯科医師連盟・日歯連から自民党旧橋本派への1億円裏献金事件。2006年に判決がでる)の無罪判決はまさにそれ。あれはすごく画期的なことであってね、 検察国家日本を斬る 宮崎学×安田好弘×魚住昭 裁判官がごく一部とはいえ検察神話から解放されているんですね。で、マスメディアも毎日新聞が「特捜の捜査能力低下」という見出しの特集を載せてたけど、あれはメディアの中では画期的なことなんですよ。「おお、ここまで書いたか」みたいな(笑)。そういう形で今、検察神話が崩れてる。それで、この戦後60年間の検察神話というのは、佐藤優さんが言ってたけど、作家が作ったんだと。その作家は誰かというと、まずは松本清張。次は立花隆。その間に山本祐司(著書に『特捜検察物語』など)、元毎日新聞のね。この人が書いた本って、ものすごい影響力がある。その時代、時代に検察神話を紡いできたライターがいるんですよ。

安田:一番最後は魚住昭……(※著書『特捜検察』は検察を評価)。

魚住:いや、魚住昭は途中からねっ……(汗)。

宮崎:転向するわけだよな(笑)。

魚住:そう、転向した(笑)。それで佐藤優さんが言ってたのはね、新聞記者は歴史の糸を紡げないと。新聞記者は目の前の事件を同時性で書いていくわけ。作家は、その同時性を歴史の縦糸で紡ぐんです。その原点が造船疑獄なんだけど、造船疑獄を原点にして、何人かの作家が検察神話を紡いできたんだと。で、僕らが言ってる国策捜査というのは、「検察神話で事件を見るのはやめましょうね」という意思表示なんです。