安田:検察官を人格的に捉えてみると、彼らの多くは、いまだ精神的に自立してないわけですよ。子供の頃の被害体験の裏返しとして検察官の職業があるんですね。いじめられたり、バカにされたり、悔しい思いをしたり、そういう思いを、大なり小なり、誰もがしているんだけど、彼らは、検察官になって社会正義を実現するという形で幼少時の不全感を晴らしていこうとしているんですね。それはいじめられた子供たちが権力を持っていじめ返す歴史なんです。その最たるものが、彼らが持っている正義感、つまり、「国家をまともにしよう」という思想なわけですよ。それが時代とともにどんどん強くなるんです。まあリクルートの時にはね、政界の汚職もあったから、それなりの意味はあった。中曽根から始まって軒並み未公開株で儲けたわけ。今回のライブドアは違うんです。基本的に政界汚職をやってない。しかも、誰も被害を受けていない。ホリエモンだけが一人勝ちしただけなんですよ。ホリエモンの被害者はいないんですよ。
魚住:いるのは、検察の被害者でしょ(笑)。
安田:そう、検察がホリエモンに手を出したから、株式の暴落という膨大な被害を出したんですよ。
宮崎:だとしたら、安田さんなんか見てて、ここにきてライブドア捜査をやる「特捜的」な流れというは、弁護士としても検察の変化として感じてた?
安田:ライブドアの弁護人はほとんど特捜のヤメ検のようですね。一般の弁護士はほとんど関与していないから、話題にも上らない。特捜が起訴し、特捜のヤメ検が弁護人になるという、ちょうどマッチポンプ状態ですから、弁護士仲間では、議論が広がりませんね。これでも、一般のヤメ検であれば、だいぶん違うんですね。
魚住:あれは不思議だよねー。ずっと不思議なんだけど、僕が特捜の事件を見てると、必ずヤメ検が弁護人に就くのね、ほとんどね。僕はヤメ検の多くは検察官の味方と言ったほうがいいようなものだと思っているのだけど、なんで敵の味方に弁護を頼むのか、ずっとわかんないんです。もちろんヤメ検の中には優秀で誠実な人もいますけど。
安田:その点からすると、(ヒューザーの)小嶋さんは今回、異色なんだよね(笑)。ヤメ検が動いている様子はないから。
魚住:(笑)。ヤメ検の弁護士たちってのは、そこそこ検察幹部だったりして、「この人たちに頼めば無罪とはいかなくても罪を一等減じてもらえる」とかね、「早く保釈してもらえる」とかね、いろんなことを考えるだろうけど、ヤメ検の世界と特捜の世界というのは、「なあなあ」に見えるけど、実は違うんです。要するに特捜がうまい具合にヤメ検を利用しているだけの話なんです。ヤメ検は、自分が特捜に対して影響力を及ぼしたかのように振る舞うことで商売が成立してるわけ。実は、特捜にとってはヤメ検が就くことによって被疑者が喋らないところを喋らせてもらったりとかがあって、特捜側の一方的な利益なんです。僕に言わせればね。被疑者側の利益になったヤメ検弁護士ってそれほど多くはないんじゃないかな。もちろん例外もあるけど。異色だったのが田中森一(たなか・もりかず。特捜のエースから「闇の紳士たちの弁護人」に。許永中と共謀して180億円の手形を騙し取ったとして2000年逮捕。裁判継続中)弁護士なんです。田中氏は独特な弁護をした。
宮崎:だからパクられたんだろ。
魚住:そう、だからパクられた。田中氏は「起訴されたら終わりだ」と。だって有罪率は99.7%なんだから。それで、どうやったら起訴されないかを考える。検察官だったから、検察官の弱みをよく知ってて、起訴されないためにいろんな手を打つわけ。それは大変なものですよ。起訴される前の段階で被疑者をかなり救ってるんです。だから、ヤメ検としてはものすごい異色の、起訴前に検察側とぶつかる弁護をやってた。ある意味では反権力なんですよ、彼はね。
宮崎:話は戻るけど、ライブドアは4月5日に熊谷前代表取締役が保釈。これで全員が釈放された。堀江だけが残ったわけです。今後はどういうふうな展開になっていくかと。
安田:あのね、ホリエモンが中でどういう勉強をしてきたか、なんですよ。もちろん彼がここまでやってきたのはね、ヤメ検弁護士の支えがあったからかも知れない。しかし、彼があそこまでがんばっているのを見ると、彼が言ってるのは本当の可能性が強いと思う。(不正を)知らなかったんだ。
宮崎:俺もそう思う(笑)。
安田:しかし、次は、裁判で、その体制で戦いきれるかどうかなんですよ。彼は、弁護士を変えて布陣を組み直すかもしれないね。そうすると、今保釈されてる人たちも全員が一致団結するんだろうと思うよ。
魚住:そういう動きがあるの?
安田:いや、そんなことまったく知りませんよ。
宮崎:堀江の裁判にあたって、裁判を迅速にするために最初に認め合うところがどうのこうのって手続きに入ってるんでしょ、今。
安田:うん。昨年11月に新設された公判前の整理手続き。
宮崎:それはどんなふうな手続きなの?
安田:裁判の前に、検察と弁護人が裁判所の指導の下に、争点を絞り込んで、その争点だけを公判でやって、判決を出そうという新しい手続きだけど、その実質は、裁判を手間を掛けずに簡単に一件落着にしようという制度なんですよ。建前は、裁判員制度を新設するので、裁判員を長く裁判に貼り付けにできないから、裁判を早く終わらせるための制度だと言われています。
魚住:これは、司法制度改革の一環で出てきた……。
宮崎:中身で出てきた制度ね。「ここはもう争わない」というような……。