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旅に出てみませんか

 
 

 滝の撮影には苦労が伴う。晴天であると滝が光を乱反射させるので、天気予報には細心の注意をはらい、曇天の日に出かけなければならない。さらにいうと歩行が“らく”な場所にある滝は少なく、難所にも分け入る。
「大棚の滝」(落差三十m)は、西丹沢にあった。県道から脇道に入り、だらだらの坂を一時間半歩いて入渓点を見つける。訪れる者はごくわずかなのか、そこからクマザサや雑草、クモの巣をかき分けながら、やっとのことで渓流に達する。かなりの急流なので、足下に注意をして、上流へとすすまなければならない。
 しだいに落下の轟音が聴こえ、滝が豪快な姿を現す。巨岩をいくつか越えて、滝つぼまで七、八mの地点にたどり着いた。
 のちに千葉さんが著した写真集『神奈川県の滝』(自費出版)にはこうある。
《三十メートルもある二筋の滝、水しぶきが共鳴してすさまじい爆音のなかで、三脚をたて、傘を開き、躍動する滝の表情を逃すまいと慎重にシャッターをきる。露出を変え、カメラアングルを変え、繰りかえしシャッターをきった》
 こうしてすべての滝を撮りおえるまで日帰りの旅は二年半つづいた。
 私たちの周辺には豊かな自然がある。それが千葉さんの地域発見であり、もっとこの自然に眼を凝らしてほしいというのが一枚一枚の滝の写真に込めたメッセージでもあった。
 ぶらり地域発見の旅に出てみませんか。(以下2008年1月号)


かとう・ひとし 1947年生まれ。出版社勤務を経て、ノンフィクション作家に。主な著書に『宿澤広朗 運を支配した男』『社長の椅子が泣いている』

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